エアー配管 【超実践】配管仕様

雑用空気(PA・Plant Air)の設計と保全:配管腐食と漏洩対策の要諦

プラントの血管とも言えるユーティリティ設備の中で、意外と軽視されがちな「雑用空気(PA)」に焦点を当てます。

本記事では、計装用空気(IA)との設計仕様の違い、水分(ドレン)に起因する配管腐食メカニズム、そして定検工事(SDM)における保全の急所について、現場経験に基づき解説します。

また、省エネの観点から無視できない「エア漏れ」対策についても、具体的な設計思想を交えて詳述します。

たかが雑用、されど生命線

「計装空気(IA)なら露点管理やオイルフリーが重要だけど、PAなんて要はただの圧縮空気でしょ?」

そんなふうに思われがちですが、実はPAこそが、定検工事(SDM)や日常保全の作業効率、ひいては作業員の安全を支える生命線なのです。

エアツールが動かない、ホースから錆水が噴き出す、そんなトラブルで工事の手を止めるわけにはいきません。

一見地味なPAラインに潜むリスクと、それを回避するための設計・保全の勘所。少しマニアックになりますが、次回の工事に役立つ知識としてお話しさせていただきます。

雑用空気(PA)と計装空気(IA)の決定的な違い

まず、設計の前提条件となる流体の性状について整理しましょう。ここが配管スペックを決める出発点です。

計装空気(IA)は、ご存知の通り、コントロールバルブや計器類を動かすための「神経」です。そのため、エアドライヤーを通して露点を-20℃〜-40℃程度(大気圧換算)まで下げ、極限まで水分を除去します。

対して雑用空気(PA)は、エアインパクトレンチ、グラインダー、清掃用エアブロー、あるいはダイアフラムポンプの駆動源として使われます。

PAは、コンプレッサーで圧縮された後、アフタークーラーで冷却された程度の「ウェット(Wet)」な状態が一般的です。

つまり、配管内には常に飽和水蒸気が存在し、外気温の変化によってドレン(凝縮水)が発生するという前提で設計しなければなりません。

この「水がある」という条件が、配管材料の選定と腐食対策において決定的な差を生むのです。

PA配管の設計仕様:なぜ「白ガス管」なのか

設計担当の方なら馴染み深いと思いますが、PA配管の仕様書を見ると、多くのプラントで以下のようなスペックが採用されているはずです。

流体区分:Utility Air / Plant Air

設計圧力:0.7 ~ 0.9 MPaG

設計温度:Ambient ~ 60℃(コンプレッサー吐出付近は高温注意)

管種:SGP(配管用炭素鋼鋼管)+ 溶融亜鉛めっき(いわゆる白ガス管)

ここで重要なのが「溶融亜鉛めっき」です。 IAラインでは、乾燥しているため通常の炭素鋼(黒管)を使用することもありますが、PAは前述の通りドレンが発生するため、黒管ではあっという間に内面腐食が進行し、赤錆が発生します。

この赤錆が剥離して末端に流れると、エアツールのフィルターを詰まらせたり、シリンダーを傷つけたりして故障の原因となります。

したがって、小口径(2インチ以下など)のPA配管には、JIS G 3452に基づくSGPに亜鉛めっきを施した「白ガス管」を採用し、継手もねじ込み式の「白継手」を使用するのがセオリーです。

ただし、主管(ヘッダー)など大口径(3インチ以上)になり溶接施工が必要な場合は、黒管(SGPやSTPG)を使用し、内面防食塗装を施すか、あるいは腐食代(Corrosion Allowance)を多めに見積もる設計となります。

最近ではライフサイクルコストを考慮して、主管にステンレス鋼(SUS304等)を採用するケースも増えてきましたが、コストとの兼ね合いになります。

ドレン対策と配管勾配の設計思想

PA配管の設計において、スペック以上に重要なのが「ルート計画」です。 湿った空気を運ぶ以上、配管内で発生した水は必ずどこかに溜まります。これを放置すると、以下のトラブルを引き起こします。

ウォーターハンマー:大量のドレンが高速で移動し、バルブやエルボを直撃する。

腐食の加速:水が溜まる箇所(滞留部)での集中腐食。

末端への噴出:作業員がエアブローをした瞬間、水が噴き出して対象物を汚染する。

これを防ぐための設計の鉄則は以下の通りです。

下り勾配の確保:流れ方向に対して、1/100 ~ 1/200 程度の下り勾配をつける。

ドリップレグ(水抜き)の設置:配管の最下点や立ち上がり手前には、必ずドレン溜まり(ドリップレグ)を設け、トラップやバルブで排出できるようにする。

枝取りは「上取り」:ヘッダーから分岐して各エリアへ供給する際、必ず配管の上側から分岐(Top Take-off)させる。下から取ると、ヘッダー内のドレンが全て末端機器へ流れ込んでしまいます。

図面チェックの際は、単に「つながっているか」だけでなく、「水がどう流れるか」を想像して検図していただけると、現場としては非常に助かります。

定検工事(SDM)における保全の急所:腐食と減肉

さて、ここからは保全・工事監督の皆様に向けた、定検時の重要チェックポイントです。PAラインは常時稼働していることが多く、SDMの時しか開放点検できない箇所があります。

ねじ込み部の腐食(隙間腐食)

白ガス管を使用している場合、直管部は亜鉛めっきで守られていますが、ねじ切りをした部分は鉄の地肌が露出しています。

施工時に防食シール剤やテープを適切に使用していても、経年で最も早く腐食するのがこの「ねじ部」です。

特に、屋外で雨水がかかる場所や、保温材の下(CUI)になっているねじ込み継手は、外面からの腐食と内面からのドレン腐食の挟み撃ちにあい、ポキリと折れるリスクがあります。

SDM期間中は、ユーティリティステーション周辺のあやしい継手をハンマーリングテストなどで点検することをお勧めします。

ドレン弁・ルート弁のシートリーク

PA配管の末端にあるドレン抜きバルブは、錆やスケールを含んだ水を排出するため、シート面が傷つきやすく、リーク(漏れ)の常習箇所です。

「閉めてもシューシュー音がする」バルブは、SDM期間中に交換が必要です。安価な汎用ボールバルブが使われることが多いですが、メンテナンス頻度を減らすために、接液部がステンレス製のものへグレードアップするのも一つの手です。

ユーティリティステーション(ホース接続口)の管理

各フロアに設置されているPAの取り出し口(カプラーやバルブ)。ここは日常的に作業員がホースを脱着するため、機械的な負荷がかかり、根元のニップルにクラックが入っていることがあります。

また、SDM工事本番では、多くの業者がここからエアを取ります。タコ足配線ならぬ「タコ足配管」になり、圧力が不足するトラブルも頻発します。

工事計画段階で、ピーク時に必要なエア量を試算し、既存のラインで足りない場合は仮設コンプレッサーや仮設配管(バイパス)を準備するのも、スムーズな工事遂行の鍵です。

プラントの省エネと漏洩対策:お金を空中に捨てないために

「エア漏れくらい、大したことない」 そう思われることもありますが、PAのエア漏れは、電気代の浪費そのものです。

0.7MPaのラインに1mmの穴が開いているだけで、年間で数万円〜十数万円分の電力がコンプレッサーの無駄な稼働として消えていくと言われています。

プラント全体で数千箇所から漏れていれば、その損失は莫大です。

超音波診断の活用

最近の保全トレンドとして、超音波式エア漏れ検知器の導入が進んでいます。人間の耳では聞こえない微細な漏れ音を可視化・聴覚化するツールです。

定検前の稼働中にサーベイを行い、漏れ箇所にタグを付けておき、定検期間中に一斉にパッキン交換や増し締めを行う。これをルーチン化するだけで、コンプレッサーの負荷率が目に見えて下がります。

漏れない設計への転換

設計段階でできる対策もあります。 先ほど「ねじ込み継手」が腐食しやすいと述べましたが、最近では小口径配管でも、可能な限りフランジ接続や溶接接続を採用する、あるいはシール性能の高い特殊な食い込み継手を採用するスペックも増えています。

イニシャルコストは上がりますが、将来の漏洩リスクと保全コスト(足場を組んでの増し締め等)を考えれば、十分にペイする投資です。

現場で役立つ「ちょっとした」気遣い

最後に、施工管理をする上で「気が利く」と言われるポイントを二つほど。

一つ目は、「バルブのハンドル位置」です。 PAのバルブは、緊急時や日常点検で頻繁に操作します。

設計図面上では問題なくても、現場に行くと手すりが邪魔で回せない、高すぎて届かない、ということが多々あります。 施工図(アイソメ)の段階で、オペレーターがアクセスしやすい位置にハンドルが向いているかを確認してください。

特にヘッダーからの取り出し弁は、チェーン操作式にするか、適切なステージからのアクセスを考慮する必要があります。

二つ目は、識別表示(カラーコード)」です。 SDM時は、窒素(N2)や計装空気(IA)など、様々な仮設ホースが入り乱れます。

もし、作業員が呼吸用エアとして誤って窒素ラインに接続したら...死亡事故に直結します。

PAの接続口には明確な表示を行い、カプラーの形状をN2とは変える(物理的に接続できなくする)などのフールプルーフ設計が必須です。これを徹底することが、現場の安全を守る監督者の責務です。

見えない空気に、意思を込める

雑用空気(PA)は、華やかなプロセス流体に比べれば脇役かもしれません。しかし、その配管の中には、プラントを安全に維持し、工事を円滑に進めたいという、我々の「意思」が詰め込まれています。

たかが空気、されど空気。 濡れた空気をどう導き、どう水を抜き、どう漏らさずに届けるか。その設計思想と保全の細やかさが、結果として大規模修繕工事の品質を底上げします。

次に現場で「シュー」というエア漏れの音を聞いたとき、あるいは錆びたバルブを見たとき、今回の話を思い出していただければ幸いです。 皆様の次の現場が、トラブルなく、安全に完遂されることを心より祈念しております。