目次
プラントは巨大な「戦隊ヒーロー」の基地である
配管にぶら下がっている無数のバルブを見て、「どれも同じ」だと思っていませんか? それは大きな間違いです。 彼らは適材適所、まるでRPGのパーティや戦隊ヒーローのように、全く異なる役割と「特殊能力」を持っています。
ある者は敵の攻撃(圧力)を一身に受け止める「盾」となり、ある者は極寒の地で魔法(流体制御)を使い、ある者は司令官の指示を忠実に実行する「参謀」となります。
もし全員が同じ性格(仕様)だったら、プラントは一瞬で崩壊してしまうでしょう。 今日は、国内大手プラントI社の安定操業を支える、頼もしくも癖の強い3人の「メインキャスト」を紹介します。彼らの性格(規格)を知れば、現場巡回がもっとドラマチックになるはずです。
無口な重戦車:「高圧・高温担当」のガチ勢
まず一人目は、高圧水素化分解装置などの最前線に立つ、チーム一番の力持ちです。 名付けて「ミスター・ヘビーアーマー」。 彼の特徴は、とにかく体が分厚くて重いこと。汎用クラス(150lb)のバルブがTシャツ一枚だとしたら、彼は900lbや1500lbクラスの重厚なフルプレートアーマーを着込んでいます。

彼の肉体の秘密は、ASME B16.34 というトレーニングメニュー(規格)によって鍛え上げられた「肉厚」にあります。どれだけ内部から高圧で押されても、彼は微動だにしません。
さらに、彼の鎧の素材はタダモノではありません。高温高圧の水素環境下でも「水素侵食」という病気にかからないよう、クロムとモリブデンを含んだ特殊合金 ASTM A217 WC6 や WC9 で作られています。
I社の現場で彼を見かけたら、その厳ついフランジを見てあげてください。「俺がここで食い止めているから、お前たちは安心して通れ」と背中で語る、無骨なハードボイルド・ガイ。それが彼です。
クールなのっぽさん:「極低温担当」の貴公子
二人目は、LNG(液化天然ガス)エリアに生息する、冷徹な魔術師です。 名付けて「デューク・オブ・フロスト(氷の公爵)」。 彼を見た時の第一印象は、間違いなく「首、長っ!」でしょう。

彼は、-196℃というバナナで釘が打てる極寒の世界でも、涼しい顔をして仕事をこなします。 普通の鉄(炭素鋼)なら寒さでガタガタ震えて(脆性破壊して)しまうところですが、彼は ASTM A351 CF8M(ステンレス鋼)という、寒ければ寒いほど強くなる魔法のスーツを着用しています。
そして、あの長い首(ロングボンネット)。あれは伊達や酔狂ではありません。
BS 6364 などの規格に基づき、パッキンという「心臓部」を冷気から遠ざけるために、あえてハイネックのマフラーを巻くように首を伸ばしているのです。
彼は決して熱くなりません。常にクールに、しかし内側では確実に流体を制御する。そのスマートな立ち振る舞いは、まさにバルブ界の貴公子と言えるでしょう。
神経質な頭脳派:「計装弁」という名の参謀
最後の一人は、少し線が細いけれど、チームで一番の頭脳を持つメガネキャラです。 名付けて「ドクター・コントロール」。 彼(計装弁)の上には、常に大きな頭脳(アクチュエータ)が乗っています。

他のバルブたちが「開けるか、閉めるか!」という豪快な二択で生きているのに対し、彼は「今は42.5%開度でお願いします。あ、やっぱり42.6%で」といった具合に、極めて繊細で、ある意味では神経質です。
彼の行動原理は JIS B 2005 や IEC 60534 という厳格なルールブック。 中央操作室(DCS)からの電気信号を、ポジショナという翻訳機を使って空気圧に変換し、ミリ単位の精度でステムを動かします。
I社のプラント品質が世界最高レベルで安定しているのは、彼が24時間文句も言わず、0.1%のズレも許さない完璧な計算で流量を調整し続けているからです。
たまに「シュー、カチャ、シュー」と独り言(作動音)を呟いていますが、それは彼が必死に計算している音なので、温かく見守ってあげてください。
あなたは彼らの「マネージャー」である
いかがでしたか? 重厚な鎧で守る「高圧ガチ勢」、長い首で寒さを凌ぐ「極低温貴公子」、そして緻密に計算する「頭脳派参謀」。
彼らはそれぞれ、ASME、ASTM、JIS という生まれ育ち(規格背景)を持ち、プラントという舞台で必死に演じています。
そして、私たちオペレーターの役割は、彼ら個性派俳優たちを束ねる「マネージャー」であり「監督」です。
「高圧彼は最近ボルトが緩んでないか?」
「極低温彼の首元に氷がつきすぎてないか?」「頭脳派彼の動きはスムーズか?」
彼らの個性を理解し、最高のパフォーマンスを発揮できるようにケアをしてあげること。それが、プラントの安全と安定操業を守る一番の近道です。
さあ、次の現場パトロールでは、彼らに心の中で「よっ、いい演技してるね!」と声をかけてあげてください。きっと、いつもと違う表情を見せてくれるはずです。