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配管の工場製作(プレハブ)

溶接配管の工場製作

溶接配管は、石油化学プラント、発電所、建築設備、船舶など、現代社会のあらゆるインフラを支える重要な部品です。その製作には、材料の受け入れから出荷まで、正確な作業と厳格な品質管理が欠かせません。溶接配管の工場製作は、熟練した技術と歩掛けに基づいた正確な工程管理で成り立っています。この記事では溶接配管の工場製作における主要工程を詳細に解説し、溶接配管がどのようにして製品として完成するのかを紹介します。

 

材料荷受け

支給または購入した配管資材は入荷後に速やかに開梱し、工事仕様書および発注伝票控えに基づき下記について確認を行い、所定の倉庫または資材置場に各種別毎に整頓して保管します。

(a)数量,仕様,サイズの確認
(b)識別塗装の確認
(c)ミルシ-トによるロットナンバ-の確認
(d)その他外観検査により、下記の点についてチェックを行う。

①フランジ・ガスケット面、外周部に打ちきずがないか
②バルブステムに曲りがなく、ねじ部にきずはないか
③管端につぶれ、めくれなどがないか

資材の受入確認実施、記録書の保存

 

資材の保管・管理

配管材料は員数確認後、種類、サイズ、用途ごとに仕分けられます。

(a)管は、管端にプラスチック・キャップを取付け保護を行う。
(b)バルブはベニヤ、プラスチック・カバ-、ガムテ-プなどにより適当な保護をし、砂の侵入、ガスケット面の錆を防止する。
(c)バルブは、閉止の状態で保管する。
(d)フランジのガスケット面は、グリ-スを塗布するか、ガムテ-プ等で保護し、錆の発生を防止する。
(e)ステンレス鋼のパイプ,フィッテング類は、海風,雨水等塩素イオン雰囲気に曝(さら)さない様防護する。
(f)ステンレス鋼に対する亜鉛ぜい化割れ防止対策を行うこと。
(g)溶接直前まで管端を保護しておくこと。
(h)保管場所はペインティング・ヤ-ドとの距離,風向きを考慮して決め亜鉛による汚染の可能性がある場合は、カバ-シ-ト等で保護する。

資材が損傷しない措置を必ず行う

 

配管材切断

仕分けられた配管材は、設計図を元に指定された長さに切断します。切断の精度は、配管の組み立てや溶接の品質に直結するため、要求される精度はシビアです。切断時には、材料の特性に応じた条件設定が必要です。また、切断面のバリ(突起)や変形を最小限に抑えるため、刃の選定や切断速度も調整します。

(a) 切断用のマーキングは、必要な切断代を見込む。
(b) 材料の誤使用を防止するため、切断線マーキング時に各々の部位に図面番号、ライン番号、ピース番号等のマーキングを行う。
(c)管の切断はパイプカッター又は高速切断機等の機械切断とする。ただし、管径が大きい場合又は機械切断が不可能な場合は次の方法でもよい。

①炭素鋼及び低合金鋼の切断は、ガス切断を行う。
②ステンレス鋼はプラズマアークで切断する。その場合には、切断部にスパッタ付着防止剤を塗布する。

(d) 低合金鋼をガス切断する場合は、200℃以上の予熱を行う。
(e) 高速切断機用の砥石は、ステンレス鋼と他の鋼種とを区別して使用する。
(f) 低合金鋼及びステンレス鋼において、ガス切断又はプラズマアーク切断した部分は、切断時の熱影響部、ガスノッチ等をグラインダー等により除去する。

歩留まりの良い切断計画書を作成する

 

管材開先加工

溶接の強度と品質を高めるため、配管の端部に開先加工を施します。開先とは、配管の端をV字やU字に削る加工で、溶接材がしっかりと入り込むスペースを確保します。開先の角度や深さは、溶接方法(TIG、MIGなど)や材料の厚さに応じて管理されます。開先加工後、加工面の形状、角度、深さを検査します。専用のゲージを用いて、設計仕様に適合しているかを確認します。不適切な開先は、溶接不良や強度不足を引き起こすため、この検査は非常に重要です。
検査結果は記録され、品質保証の証拠として保管されます。

(a) 開先加工は機械加工とする。ただし、機械加工が不可能な場合には、ガス等による切断後、必ずグラインダ-仕上げを行う。切断面および開先面は、切断および開先加工による割れ、きず、バリ等がなく、平滑な面に仕上げなくてはならない。
(b) 厚さの異なる継手部の開先は、同厚になるよう1/4以下の勾配をつけて加工する。ただし、パイプの製作公差により内面に目違いを生じた場合は、1.5㎜まで許容する。
(c) 開先面及びその近傍の錆、スケール、油成分、水分、その他溶接に有害なものは、ウエス、ワイヤブラシ、洗浄液などを使用して完全に除去する。
(d) ステンレス鋼には、ステンレス製のワイヤブラシ及び低塩素系の洗浄液を使用する。
(e) 開先加工終了後、開先検査を行い、防錆のために開先保護剤を開先面に塗布する。

開先加工検査記録の作成

 

 仮付け溶接

仮付け溶接は、少量の溶接材を使って部材を仮に接合する作業で、本溶接時のズレを防ぐ役割を果たします。TIG溶接が一般的に使用されます。

(a) 溶接開先部に直接施工する仮付け溶接は、本溶接と同一の溶接方法で行う。仮付け溶接に溶込不良あるいは割れなどの有害な欠陥がなければ本溶接の一部と見なすことができる。仮付け溶接部の溶込不良あるいは割れなどの有害な欠陥は除去する。
(b)溶接部に仮付けピースを用いる場合は、下記の通りとする。

①仮付ピ-スは母管と同材質のものを使用すること。
②低合金鋼の場合、仮付ピ-スを母材に溶接する部分は仮付ピ-ス除去後PTまたはMTを行い欠陥のないことを確認すること。また、本管に焼鈍を要求されている場合は仮付ピ-ス除去跡も焼鈍範囲に入れること。

(c) つなぎ合わされる配管継手の目違いは1.5㎜以内とする。

組立て形状の検査

 

本付け溶接(プレハブ作業)

仮付けが完了したら、本付け溶接を行います。この工程では溶接仕様書に記載された方法で配管を完全に接合します。溶接条件(電流、電圧、ガス流量など)は溶接施工要領書(WPS)の記載内容に基づき、材料や規格に応じて設定されます。
本溶接では、溶接ビードの美しさだけでなく、強度や気密性が求められます。特に、圧力容器やガス配管では、溶接部の欠陥(クラック、気孔など)が許されないため、熟練の溶接工が細心の注意を払います。溶接後は、目視検査や非破壊検査で品質を確認します。

(a) 配管は作業条件の良い場所で可能な限りプレハブとする。ただし、機器まわりの複雑な配管は、現場での取合いを十分検討する。
(b) プレハブエリアは防風雨対策を施し、溶接作業に適した環境を維持する。また、異材の混入そのほかの事故を防止するためエリア内の整理整頓に努める。
(c) プレハブに当たっては現場組立箇所を十分検討し、現場溶接に支障のないようにする。
(d) 溶接施工後に変形をきたすおそれのある箇所については仮サポートを取付ける。
(e) プレハブ後は管内を清掃し、開口部より雨水、ほこり、異物等が管内に入らぬように蓋をする等の養生を施し、フランジ面を傷つけぬように管端を保護する。
(f) プレハブ配管の運搬に当たっては、落下防止措置をとり、運搬中に変形や傷をつけぬように保護する。
(g) 管端部が開先加工されている場合には、開先面に防錆剤を塗布し、プラスチックキャップ等で蓋をする。
(h) 取付け現場付近の仮置きは、他の作業の邪魔にならぬよう、また、落下物などで傷つく危険のないところを選定する。
(i) プレハブ配管には使用場所を明確にするため、製作図面などに基づくライン番号、ピース番号等を記入する。

非破壊検査指示が無くても最低限VT(外観目視検査)は実施する

 

出荷前確認

溶接が完了した配管は、出荷前に最終検査を受けます。この工程では、寸法、溶接品質、外観、仕様適合性を総合的にチェックします。仕様書に規定がある場合は非破壊検査(X線、超音波、磁粉探傷など)を実施し、内部欠陥がないかを検査する場合もあります。
また、配管の表面処理(塗装、防錆処理)やマーキング(識別番号、仕様の刻印)もこの段階で行われます。全ての検査をクリアした配管だけが、次の工程である出荷に進みます。この厳格な確認が、顧客の信頼を支えます。

出荷前確認記録の作成

 

端末養生

出荷前に、配管の端末をキャップ、テープ、またはプラスチックカバーで養生します。養生の目的は、輸送中や保管中の汚れ、傷、湿気から配管を保護することです。特に、ステンレス鋼や特殊合金の配管では、わずかな汚染が腐食の原因となるため、徹底した養生が求められます。養生後、配管は梱包され、出荷準備が整います。梱包には、木枠やパレットを使用し、輸送中の振動や衝撃から製品を守ります。

 

まとめ

溶接配管の製作は前述の工程を通じて、材料から高品質な製品へと変貌を遂げるプロセスです。各工程には、技術者の熟練、厳格な品質管理、そして細部へのこだわりが詰まっています。地味に見える作業の積み重ねが、プラントやインフラの安全と信頼性を支えているのです。
溶接配管工場製作に興味を持った方は、ぜひその裏側にある技術力と情熱に注目してみてください。ものづくりの現場では、日々新たな挑戦と改善が続いています。