工場製作及び現場取付用1DB単価表販売中

溶接配管の見積完全解析

浮屋根タンクの構造と防爆・寒冷対策

「浮屋根式タンク(FRT)」は、プラントの中でも非常にダイナミックな動きをする設備です。数万キロリットルの液体を抱えながら、その液位に合わせて巨大な屋根が音もなく上下する。その裏側には、揮発を抑え、火災を防ぐための精緻な設計思想が隠されています。

浮屋根式タンクの基本構造:蒸発損失を最小化する論理

浮屋根式タンクの最大の使命は、ガソリンや原油などの揮発性液体から発生する「蒸発損失」を物理的に封じ込めることにあります。これは経済的な損失防止だけでなく、環境保護、そして何より火災リスクを低減するための極めて合理的なアプローチです。

固定屋根式タンク(CRT)の場合、液面と屋根の間に広大なガス空間(蒸気相)が存在します。気温が上がれば液体は蒸発し、その空間にある可燃性ガスがタンクの外へ押し出されます。

これが「呼吸損失」です。対して浮屋根式は、屋根そのものを液面に直接浮かせ、このガス空間を物理的に排除します。屋根が液面と共に上下することで、液体が空気に触れる面積を最小限に抑え、蒸発を劇的に抑制しているのです。

屋根の形式には、外周部に浮力室を持つ「シングルデッキ型」と、屋根全体が二重構造で断熱性に優れた「ダブルデッキ型」があります。大規模なプラントでは、その安定性と強度からダブルデッキ型が多く採用されています。

防爆エリアの判定:ゾーン1の管理とシールの重要性

設計や施工において、安全距離や電気設備の選定を左右するのが「防爆エリア」の考え方です。浮屋根式タンクには、その構造ゆえの特殊な区分が存在し、ここが保全上の重要なポイントとなります。

浮屋根とタンク側板(シェル)の間には、屋根がスムーズに上下動できるように数センチの隙間が空いています。ここを塞ぐのが「リムシール」です。

一次シール(メイン)と二次シール(ウェザーシールド)の二段構えが一般的ですが、この「一次シールと二次シールの間の空間」は、通常運転時においても可燃性ガスが滞留する可能性が高いと見なされ、法規上「第1類危険箇所(ゾーン1)」に指定されます。

工事監督員が最も警戒すべきは、このシール部の健全性です。経年劣化や屋根の傾きによってシールに隙間が生じると、ゾーン1の範囲外へガスが漏れ出し、落雷時の火災リスクや環境への影響が飛躍的に高まります。

定検時にはシールの弾力性や、側板との密着性を全周にわたって厳格に確認しなければなりません。

配管仕様の詳細:内部ドレンラインの設計条件と材質選定

浮屋根の上に溜まった雨水をタンク外部へ排出する「ルーフドレン」は、タンク内部を貫く最も過酷な配管システムです。屋根の動きに合わせて伸縮する必要があるため、一般的な地上配管とは全く異なる設計思想が求められます。

内部ドレン配管の設計条件

設計担当者が仕様を決定する際、以下の条件を基準とするのが一般的です。

  • 設計圧力:通常は液頭圧程度ですが、気密試験や万一の閉塞を考慮し、1.0 MPaG 以上の性能を担保します。
  • 設計温度:内容物の温度および地域の最低気温を考慮し、-20℃から60℃の範囲で設計されます。
  • 流体:主目的は雨水ですが、万一のリーク時に備え、内容物(原油やガソリン)に対する耐食性が必要です。

配管材質と管厚

内部配管は一度運転が始まれば、次の定検まで数年間は触れることができません。そのため、信頼性を最優先した仕様を選定します。

  • 材質:炭素鋼鋼管(STPG370 相当)が主流ですが、没水状態での外部腐食を考慮し、スケジュール80(Sch 80)以上の厚肉管を採用するのが定石です。
  • 継手:屋根の昇降に追従するため、スイベルジョイント(回転継手)を複数箇所に配置します。このジョイントのシール材(パッキン)は、油種に適合したフッ素ゴムやテフロン系を選定し、長期間の動作安定性を確保します。

寒冷地対策:雨水排水ノズルとスチームトレースの急所

冬場の運用において、ドレンラインの凍結は「タンク沈没」という致命的な事故を招く引き金となります。雨水が排出されずに屋根の上に溜まれば、その重みで浮屋根はバランスを崩し、最悪の場合は転覆・沈没に至ります。

凍結の起点は、タンク側板を貫通して外部へ出る「ドレン排出ノズル」付近です。ここはタンク内部の液温が伝わりにくく、外気に直接さらされるため、最も閉塞しやすい部位です。

スチームトレース施工の重要ポイント

監督員の皆さんは、以下の施工精度を徹底的に管理してください。

  • 施工範囲:トレース管はノズル本体だけでなく、排出バルブのボディやフランジ部分まで入念に巻き付けます。
  • 熱伝導の確保:トレース管と配管本体の間に隙間があると、熱が逃げてしまいます。必ず熱伝導セメントを塗布し、熱を「面」で伝えるように工夫してください。
  • 保温(ラギング)の処理:トレースの上から保温材を施工しますが、雨水の浸入は厳禁です。浸入した水分が凍結を早めるだけでなく、保温下腐食(CUI)を引き起こし、配管に穴を開ける原因となります。外装板のジョイント部やノズル貫通部のコーキング処理には細心の注意を払ってください。

定検工事での急所:沈没と漏洩を防ぐための注意事項

定期修理工事は、数年間にわたる運転の安全を担保するための「最後の砦」です。現場監督員が絶対に見落としてはならないポイントを整理します。

浮屋根の脚(サポートレッグ)の調整

タンクを空にして屋根を底部に降ろす際、屋根を支えるのがサポートレッグです。数十本ある脚が均等に荷重を受けているかを確認してください。

不同沈下などにより特定の脚に荷重が集中すると、底板の損傷や屋根全体の歪みにつながります。脚のピンが腐食で固着していないか、スムーズに長さ調整ができるかも重要です。

内部ドレン配管のリークテスト(気密試験)

タンク開放時にしかできない最も重要な検査が、ドレン配管のリークテストです。配管内に水を張り、規定の圧力をかけて数時間保持します。

スイベルジョイントのパッキンからの微細な漏れも許されません。ここで妥協すると、運転開始後に「雨水に油が混じる」という環境事故を招き、プラントの信頼を失うことになります。

リムシールの隙間(ギャップ)計測

シールは消耗品です。屋根が昇降する全範囲において、側板との隙間が許容値(一般的に30mmから40mm以下)に収まっているかを実測します。

側板には必ず「真円度」の誤差があるため、特定の高さで隙間が広がるケースがあります。これを無視すると、蒸発損失だけでなく落雷時の火災リスクを高めることになります。