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循環冷却水:高度な設備管理とスライム防食

大規模なエネルギー拠点のプラントにおいて、循環冷却水システムは人間の「血管」や「汗」のような役割を果たしています。ど

んなに高度な反応プロセスを持っていても、その熱を適切に除去できなければ、装置は一瞬でオーバーヒートし、停止を余儀なくされます。

長年、現場で多くの定検工事や新設工事に携わってきましたが、冷却水系のトラブルは、目に見えにくいところで静かに進行するのが特徴です。

スライムの付着、配管の腐食、そして冷却能力の低下。これらは設計・施工・保全のどこかに「歪み」があることで発生します。

本記事では、監督員や設計担当者の皆様が現場で直面する課題を念頭に、冷却水系のアセットインテグリティ(設備健全性)をどう守り抜くか、設計思想と管理の要点をまとめました。

設計段階での最適化:冷却塔とシステムの骨組み

循環冷却水系の設計において、最初に決めるべきは冷却塔(クーリングタワー)の型式と、将来の保全性を見据えたマテリアル(材質)の選定です。

冷却塔の選定基準:向流型か横流型か

冷却塔には大きく分けて「向流型(カウンタフロー)」と「横流型(クロスフロー)」があります。設計担当者は、設置スペース、圧力損失、そしてメンテナンス性を考慮して選定しなければなりません。

向流型は、水と空気が対向して流れるため熱交換効率が高いのが特徴ですが、塔高が高くなる傾向があります。一方、横流型は塔高を低く抑えられ、散水槽の点検が運転中にも容易であるという利点があります。

近年では、長期的なLCC(ライフサイクルコスト)を考慮し、腐食に強く軽量なFRP(強化プラスチック)製の部材を構造骨組みやルーバーに採用することが一般的です。

熱交換器の材質選定とJPI規格の適用

冷却水が通る熱交換器のチューブ材質選定は、プラントの寿命を左右します。一般的には炭素鋼が使われますが、海水成分の混入リスクや高度な耐食性が求められる部位では、JPI-7S-24(石油産業用熱交換器規格)等を参考に、ステンレス鋼や二相ステンレス、あるいはチタン管の採用を検討します。

特に、冷却水側はスケーリングや腐食のリスクが常にあるため、チューブ内の流速を適切に保つ設計が不可欠です。流速が遅すぎると土砂や微生物が堆積してスライムを形成し、速すぎるとエロージョン・コロージョン(壊食・腐食)を引き起こします。設計流速は、通常1.5m/sから2.5m/sの範囲で調整するのが定石です。

配管仕様と設計条件の論理的構築

配管は、冷却水を各装置へ届ける重要なインフラです。ここでは具体的な設計数値と仕様について触れます。

循環冷却水の配管設計条件

国内の大手拠点で標準的に採用されるCW配管の設計条件は、概ね以下の通りです。

  • 設計圧力:0.98 MPaG(あるいは運転圧力に余裕を見た数値)

  • 設計温度:60℃(戻り水温度の異常上昇を考慮)

  • 材質:炭素鋼(STPY400等、大口径は溶接鋼管)

ここで重要なのは、炭素鋼配管の内面対策です。冷却水は腐食性を持つため、大口径配管(通常300A以上)では内面エポキシ樹脂コーティングを施すのが一般的です。

これにより、配管の長寿命化と摩擦損失の低減を同時に図ります。

 ヘッダー配管のレベル精度と流体バランス

設計図面上で見落とされがちなのが、広大な敷地を這う大口径ヘッダー配管の「レベル(水平度)」です。施工時にミリ単位の精度でレベルを出さないと、配管内に空気溜まりができたり、末端の熱交換器への流量が不足したりする「偏流」の原因となります。

特に新設工事では、不等沈下を見越したサポート設計と、要所への空気抜き弁(エアベント)の配置を徹底してください。

これをおろそかにすると、運転開始後に「なぜか特定の装置だけ冷えない」という、原因特定が困難なトラブルに悩まされることになります。

※不等沈下(ふとうちんか、不同沈下とも)は、地盤の軟弱さなどが原因で、建物の基礎が均一に沈まず、場所によって異なる沈下量を示す現象。

施工における品質管理の急所

工事監督員の皆様に最も注力していただきたいのが、施工品質、特に「目に見えなくなる部分」の管理です。

内面コーティングのピンホール検査

CW配管の施工において、内面コーティングの不備は致命傷になります。現場での溶接接合部(ジョイント部)の内面補修は、非常に狭隘な空間での作業となるため、施工品質が低下しやすいポイントです。

ホリデー検知器(ピンホールテスター)による検査を徹底し、わずかな被膜の欠陥も見逃さないでください。

小さなピンホール一つから腐食が進行し、数年後には配管外面に「錆のコブ」が発生して漏洩に至るケースが後を絶ちません。施工要領書には、必ず湿膜厚の測定とピンホール検査の項目を厳格に盛り込んでください。

メンテナンス(定検工事)での実務と注意点

定検工事(SDM)は、普段見ることができない冷却水系の内部を「診断」し、「治療」する絶好の機会です。

スライム・腐食のモニタリングと評価

運転中から、テストクーポン(腐食試片)や電気化学的プローブを用いたモニタリングを行っているはずですが、定検時にはこれらを取り出し、実際の減肉量やピッティング(孔食)の有無を確認します。

JIS B 8223(ボイラ及び熱交換器の補給水及び水質)を基準としつつ、現場の冷却水質が設計通りに管理されていたかを照合します。

スライムが大量に付着している場合、それは単なる汚れではなく、微生物腐食(MIC)の温床となっている可能性が高いのです。

 物理的洗浄と化学的洗浄の使い分け

熱交換器の性能回復には、高圧ジェット洗浄が効果的です。しかし、チューブ内に硬質のスケールが強固に付着している場合は、薬品を用いた化学洗浄を検討しなければなりません。

ここで注意すべきは、洗浄後の「中和」と「予膜処理」です。洗浄で金属面が露出した直後は、非常に腐食しやすい状態(活性態)にあります。

速やかにリン酸塩系などの防食剤で金属表面を保護する予膜を形成させることが、次の定検までの健全性を保つ秘訣です。

冷却塔の清掃とレジオネラ対策

冷却塔の内部にある「充填材(フィル)」は、長年の運転でスライムやスケールが詰まり、空気の通りが悪くなります。定検時には充填材の状態を確認し、著しい閉塞や破損がある場合は交換が必要です。

また、冷却塔は「レジオネラ属菌」の増殖リスクを常に抱えています。法規に基づく水質検査はもちろん、定検時の清掃・消毒を徹底してください。

これは設備の保全だけでなく、働く人々の安全を守るための必須業務です。

エピローグ

循環冷却水系の設備管理は、派手な最新技術の導入よりも、設計段階での細かな材質検討、施工時の地道な品質管理、そして定検時の正確な現状把握といった「基本の積み重ね」がすべてです。

初期設計でコストを惜しんで安易な材質を選んだり、施工時のレベル出しを妥協したりすると、その後の数十年間にわたって膨大な保全費用と、予期せぬ装置停止のリスクを抱え続けることになります。

「設計・施工・保全」がひとつのデータで繋がり、ライフサイクル全体で最適な判断を下すこと。それが、私たちが目指すべきアセットインテグリティの姿です。

現場の監督員や設計担当者の皆様が、この記事の内容を一つでも現場に持ち帰り、プラントの「健やかな体温」を守る一助としていただければ幸いです。