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ガスケット選定とトラブル対策

現場で設備の維持管理を担当していると、ガスケットなんてどれも同じに見えるかもしれませんね。しかし、我々のような巨大なプラントを扱う者にとって、ガスケットの選定ミスは即、漏洩や火災といった重大事故に直結します。

今回は、数ある部品の中でも特に「適材適所」が求められるガスケットの応用選定と、現場でよく起きるトラブルへの対策について説明します。「なぜこの材質が選ばれているのか」を論理的に理解できるよう、私の経験を交えて解説していきます。

流体とプロセス条件から導き出す「最適解」

流体別の材質選定の基本

ガスケット選定の成否は、流体の化学的性質(腐食性)と、物理的条件(温度・圧力)の掛け合わせで決まります。

設計の基本はJIS B 2404やJPI-7S-15といった規格に準拠することですが、現場ではその数字の裏にある「流体のクセ」を読み解く必要があります。

炭化水素・油気(メインプロセス)

一般的な油のラインでは、復元性の高い渦巻形ガスケットが多用されます。金属のフープ材の間にフィラーを挟み込んだ構造で、温度変化によるフランジの動きにも追従してくれる優れものです。フィラー材には、耐熱性と耐薬品性のバランスが良いグラファイトが標準的に使われます。

腐食性流体(強酸・強アルカリ)

化学的に非常に安定しているPTFE(フッ素樹脂)被覆のガスケットが選定されます。ただし、PTFEには「コールドフロー(クリープ現象)」という、荷重をかけ続けると徐々に変形してしまう特性があります。

これを見落とすと、締結後に時間が経ってから漏洩する原因になります。

水・蒸気ライン

中低圧域であれば、経済性を重視してノンアスベストのジョイントシートが活用されます。ただし、高温・高圧の蒸気ラインになると、やはり渦巻形ガスケットの出番となります。

特殊環境と「マイナス29度」の壁

低温プロセスでの材料選定

プラントには非常に温度が低いプロセスも存在します。特にマイナス29度を下回るような環境下では、一般的なゴムや樹脂はカチカチに硬くなってしまい、シール機能を失う「脆性(ぜいせい)」という現象が起きます。

このような低温域では、材料が割れないように「衝撃値」を確認しなければなりません。一般的には、ステンレス鋼(SUS304やSUS316L)のフープ材を使用した渦巻形ガスケットや、より過酷な条件ではASTM A182に準拠した金属リングジョイントを採用します。金属そのものの弾性と強度を利用して止めるわけですね。

高温環境と応力緩和

逆に高温域では、応力緩和という現象に注意が必要です。熱によってガスケットやボルトがわずかに伸びたり、ガスケット自体が熱劣化で収縮したりすることで、締め付け力が低下します。これを防ぐには、定期的な増し締め(ホットトルク)や、熱による寸法変化を計算に入れたボルト選定が必要になります。

現場で差が出る「施工の極意」とトラブル対策

片締めとトルク管理の重要性

選定が完璧でも、取り付け方が悪いと全てが台無しになります。現場で最も多いトラブルの一つが「片締め」です。フランジを締め込む際、一箇所だけを強く締めてしまうと、ガスケットが不均一に潰れ、反対側から漏洩が発生します。

これを防ぐためには、対角線の順番で徐々にトルクを上げていく「スター締め」が基本中の基本です。

また、最近ではトルク管理の重要性が以前にも増して叫ばれています。職人の「勘」に頼るのではなく、指定されたトルク値で確実に締め切ることが、長期的な気密性を保証します。

異常の早期発見

もし運転中に微小な漏洩を見つけたらどうすべきか。まずは応力緩和を疑い、増し締めを検討しますが、すでにガスケットが損傷している場合は逆効果になることもあります。「なぜ漏れたのか」を、流体、温度、圧力、そしてボルトの締め付け状態から推測できる力が、皆さんには求められています。

知識を「知恵」に変えるために

ガスケットは、フランジとフランジの間で黙々と働く縁の下の力持ちです。しかし、その小さな一枚がプラント全体の安全を支えているといっても過言ではありません。

設計図に書かれた材質をただ受け入れるだけでなく、「この流体だからこの材質なのか」「この温度だからこの構造なのか」と一歩踏み込んで考えてみてください。

その積み重ねが、いずれ皆さんの「技術者としての勘」を養うことになります。

JISやJPIの分厚い規格本を眺めるのも大切ですが、ぜひ現場で使い古されたガスケットを観察してみてください。潰れ方、色の変化、腐食の跡……。そこには教科書には載っていない「真実」が刻まれています。